
押すってなに?
※日本国内での大麻所持、使用は法律で禁止されております。
私はリエの育てた大麻を分けてもらい、密売して栽培器具の費用を稼ぐことになった。
ギャンブルで作ってしまった300万円の借金を返すためだ。
リエは
「掲示板サイトとかSNS使えばすぐお客さん見つかるよっ。私がお客さん探してあげるから、貴方は押してきて」
そう言った。
「押すってなに?」
「売買の隠語だよっ。売ることを押す、買うことを引くって言うの。売人のことプッシャーっていうでしょ?」
なるほど
その時、初めて隠語を知った。
※この記事に記載していることは、アクセス履歴や個人を特定されない方法を使って売買しておりました。安易にインターネットやSNSを利用して、違法物の売買の真似はしないでください。
あとから知った話だけど
リエはプログラミングできるぐらいパソコンに強くて、海外留学経験や外国人BARに入り浸っていたおかげで外国人との繋がりがあり、インターネットアクセス履歴を特定できない方法を知っていたり、所有者を特定できない携帯電話の入手が可能だった。
「じゃあ●●日の日曜日にプッシャーごっこしよっ。昼の12時にリエの家に来てっ」
そう約束してその日は終わった。
初めての大麻プッシャーごっこ
私は約束の日時に、リエの家に向かった。
まだ本番じゃないのにドキドキしている
昨日の夜は寝れなかった。
寝不足と緊張で嫌な手汗が止まらない。
目の奥が熱い。
大丈夫だろうか?
うまくできるだろうか?
そんなことばかり考えていた。
リエの家に着くと
大麻と測りとパケがテーブルの上に置いてあった。
リエはジョイントをくわえ、狼煙をあげながら携帯を触っていた。
そのアンニュイな姿は、見惚れるほどにハマっていた。
「やっぱり夜なのかなぁ?昼間の方が安全な気がしたけど、お客さんがまだ捕まらない。ちょっと待っててっ♪」
リエは楽しそうだった。
「なんでそんな楽しそうなの?」
「ワクワクするじゃんっ♪笑笑」
「捕まったらどうするの?笑」
「手紙書いてあげるねっ♪笑」
こんな調子だった。
心底、リエのメンタルが羨ましかった。
私にはこういう感覚はない。
とりあえずお客さんが捕まるまで、なにもできない。
私はソワソワしていた。
リエにジョイントを勧められたが、失敗したら困るので私は吸わなかった。
代わりにタバコを吸っていたのだが
リエに
「貴方の吸うタバコの匂いが好きっ。冷たい青い匂い」
と、この時初めて言われた。
リエは物事を色で例える癖がある。
お酒を飲む時も、チャイナブルーは青いから好き
という理由でチャイナブルーを頼む。
特に青が好きらしいのだけど、青ならなんでもいいわけでもなく好みの青色がある。らしい
よくわからん。
けど、この時はなんとなく嬉しかった。
昼の12時にリエの家に到着して2時間ほどたった頃だったと思う。
急にリエが騒ぎ出した
「きたっ!!4g!!きた!!」
それからリエは
ビンの中から大麻を取り出して、4g測ってパケに入れた
そして4gの大麻を渡しながら
「はいっ。じゃあこれ持って●●にあるTSUTAYAに行ってきて。また指示するからそこで待機してて。」
ごめん、リエ
やっぱやめるわ。
なんてもう言えない。
行くしかない。
私はリエが詰めてくれたパケを持って、指定された場所へ、リエの自転車を借りて向かった。
白シャツ、黒いジーパン、メガネ
マップで場所を確認して指定場所に向かった。
自転車で15分ぐらい離れた場所にTSUTAYAはあった。
到着したものの、リエに連絡したらいいのかどうしたらいいのかよくわからなかった。
とりあえずTSUTAYAのすぐ近くにあるコンビニの前でタバコを吸いながら連絡を待っていた。
しばらくしてリエから電話が来た
「TSUTAYAの前に、白シャツで黒いジーパンで眼鏡かけてて、身長が170cmぐらいの細身の男の人が、お客さんだから ●●さんですか?って声かけて」
「待って。確認する」
そっとTSUTAYAの前に目を配ると、特徴と一致する男性が携帯を片手に立っていた。
「いた。いたけど、どこで渡せばいいんだ?TSUTAYAの前はヤバイだろ」
「TSUTAYAの横に細い路地あるでしょ?そこで渡して。でも気をつけてねっ。物だけ奪う人もいるから」
急にそんなこと言われて、すごく不安になった。
ゴリゴリの悪そうな人を想像してたけど、現れたのはパッと見た感じ普通な30代ぐらいの男性。
大丈夫、大丈夫、
心を決めて話しかける
「こんにちは。●●さんですか?」
つま先がジワジワして、肩がゾクゾクする
後頭部辺りが泡立つ感覚
とにかく自分が緊張してるのがわかる
「あっ、はい、そうです」
お客さんもキョドッていた。
多分、似たような気持ちだったんだろう。
「えー、、、っと。2万円です。先にお金見せてもらっていいですか?」
私はお金の確認をした。
お客さんはポケットから、折りたたんである2万円を出した。
お金はちゃんとある
あとは物と交換して終わりだ
「じゃあ、こっちの細い道で」
と言い
お客さんをTSUTAYAの横の路地に呼び、お金を受け取り、物を渡した。
お客さんは
「ありがとうございます。では失礼します」
と、言い残しそそくさと帰っていった。
1秒でも早く、どこか安心できる場所に離脱したかったのだろう。
私も早足で自転車置き場に向かい、尾行に気をつけながら急いでリエの家に帰った。
初プッシャーの報酬2万5000円
初めての取引を終えて、私は興奮していた。
リエの家に戻ると間髪入れずに
「お疲れー!!次の注文きてるよー♪はいっ4gと1gが2件」
「場所は●●と●●と●●。お客さんには待ってもらうように伝えてあるから場所ついたらこっちに電話して」
と、リエからもう次の取引を命じられた。
「そんなに買う人がいるの?」
「本気で探したり宣伝出したらこんなもんじゃないよっ」
私はこんなに大麻を買う人がいることに驚いた。
そして、私はまた自転車に乗り、指定された場所へ行き、3件の取引きを終わらせた。
お客さんの1人は大学生ぐらいの若い男、あとの2人は女性だった。
この時、私は
「意外と若い子とか女性とか、普通の人が買いに来るんだな」
と思った記憶がある。
人は外見ではわからない。
私はリエの家に戻った。
「お疲れ様ーっ」
「お疲れ様ー。次の注文は?」
「もう夜になるから締め切ったよっ」
「そうなの?夜はなにかあるの?」
「イメージだけど、夜は危ない気がする。暗いし。」
リエのイメージでは
昼間は比較的普通の客層の人が多くて、夜はそこにゴリゴリの不良や強盗目的のお客さん等が混じり、トラブルに遭遇する可能性があり、職務質問なども夜にされるイメージがある
昼間と夜ではトラブルが起きる可能性が高いのは夜のような気がする。
という理由で、夜の行動はやめようと言われた。
はっきりした根拠はないけど、リエの言いたいことは感覚的に共感できた。
その日は3時間ぐらいで10g 5万円分売れた
報酬は半分の2万5000円
こんな短時間でこんなに儲かるとは。
ただ自転車乗って、指定された目的地に行っただけなのに。
と
その時、私は感動していた。
1日10g、これをあと5回したらトータルで15万円
この調子なら大丈夫そうだ。
私はその後
仕事が休みの日にはリエの家に行って、プッシャー活動を行なった。
最初と合わせて4回、初めた日から2週間後60gが完売した。
「片手間でこんなに儲かるのか。長い時間働いてるのがバカみたいだ」
そう思った。
栽培を始める軍資金ができたので、リエに栽培の機材を頼んでもらった。
次は栽培を初めて一気に稼ぐ!!
そして借金を返すんだ!!
いつの間にか状況に慣れて、不安な気持ちも吹き飛んでいた。
つづく